和三盆の暇人どっとこむ

放射線技師のこと、日々のこと

膵臓ダイナミックCTの意義

 

どうも、こんにちは。わさんぼんです。

 

CT検査を担当しているとDrから「ダイナミックで。」などと指示が入ることがあります。

ここでいうダイナミックとは多時相という意味です。

つまり、同じ撮影範囲に対し撮影タイミング(時相)をずらしつつ複数回(2~5回)撮影するって意味です。

  なぜ、ダイナミックが必要なのか?ということについては

  1. 多時相(動脈相、平衡相 etc)の画像からとにかく「情報が欲しい」
  2. 多時相の画像から疾病の「診断をつけるため」
  3. 見たい箇所の最適な造影タイミングが確実ではないので、保険のため

 

などが考えられます。臨床でいうと

 1は救急外来で来た外傷患者などの撮影

 2は肝細胞がんの診断

 3は血管の撮影        などです。

 

 今回は臨床でもよくある「膵臓癌に対して行うダイナミックCT」について考えてみます。

 

つづく⇒

 

基本的に膵臓は肝臓とは異なり動脈からの栄養しか受けていません。

動脈によって膵実質が一番染まるタイミングで撮像すれば、乏血性膵がんは判別できるということになります。

 

ではなぜ膵臓癌はダイナミックで撮影するのでしょうか?

 膵臓ダイナミックの撮像タイミングは各施設によると思いますが以下のようなタイミングが考えられます。

 

  • 単純撮影
  • 早期動脈相(注入から25s程度)
  • 膵実質相(45s)
  • 門脈相(50s)
  • 肝実質相(75s)
  • 平衡相(180s)
  • 遅延相(300s)

 <<注入条件>>

600mgI/kg

30秒固定注入

 

まずは動脈相です。

膵臓の栄養血管は膵臓周囲にアーケードを形成しています。

(図のように膵頭部と膵尾部では栄養する動脈系が異なるのですが

一部交通しているので膵アーケードといいます。)

動脈相では多血性膵腫瘍や動脈への腫瘍の浸潤を見ます。

 

続いて膵実質相は乏血性膵がんと正常膵実質の判断がつきやすいです。

 

門脈相は門脈への腫瘍の浸潤が見られます。(比較的造影効果の近い膵実質相でも見ることができるともいわれます。)

 

肝実質相は肝臓への転移を見るためです。

 

平衡相は膵以外の様々な臓器を見るためで造影検査における基本的なタイミングといえます。この相の目的は遅れて染まる膵がんを見るためでもあります。

 

遅延相は5分程度経つと遅れて染まってくるような膵管癌を見るためです。

 

これらは全てを毎回撮像する必要はなくて

スクリーニングなのか?鑑別なのか?進展度が見たいのか?

などなど検査の目的に合わせて、必要な時相を選んで画像取得できるといいですね!

こちらからDrに提案できるようにしておくと、患者にとっても無駄がなくて有益だと思います!

 

 

質問等あればお気軽にコメントください。

参考文献は八町先生の「CT造影理論」です。